なぜ 音楽レッスンが人生で重要なのか
「あなたの伝えたいことは何?」
これは私が、ボストンの
ニューイングランド音楽院在学中に
恩師から毎日のように言われた言葉です。
それまで、日本ではいわゆる
〈先生に言われたことを
きちんとやる良い生徒〉
だった私には
質問の意味がわかりません。
きちんと練習して
レッスンに臨んでも
初めの2段でストップされて
同じ質問が繰り返されます。
「どうして、そうやって弾くの?
あなたは何を伝えたいの?」
先生はある時
私に一人の生徒の演奏を聴かせ
こうおっしゃいました。
「あなたにはきっと
突拍子もない変な演奏に
聞こえるでしょう?
でも彼はこう弾きたいの。
これが彼の個性。
それが枠をはみ出しすぎた時に
修正してあげるのが私の役目よ。
でも、私は足してあげる事は
できないの。
私は、あなたじゃないから。」
「音楽の演奏に、
正しいも間違いも、ないの。
唯一の間違いは
自分で考えることをせずに
空っぽで音だけ弾くことよ」
この言葉を聞いたときの衝撃は
今でも忘れられません。
同時に、私の中の扉が
開き始めた瞬間でした。
ただ〈上手くなりたい〉と
【 "どんな風に" 上手く弾きたいか 】
は違う。
自分がどう弾きたいかが
具体的にわかっていないのに
闇雲に練習したところで
音楽は、上達しない。
とことん考えぬいて
頭の中に自然とバイオリンの音が
聴こえてくるようになった時
多分それが、あなたの
【こう弾きたい!】です。
こう言う音。
こう言うフレーズ。
こう言う気持ち。
それは、先生からの一言一句を
言われるがままに
コピーすることでもないし、
ただ闇雲に1日に8時間練習したところで
出てくる感情ではない。
自分が積極的に
自分が主役となって音楽作りに関わって初めて
弾くことが楽しくなるんです。
もし練習が上手くいかなかったり
楽器を弾くことが
苦しくなっているとしたら
少し楽器を横に置いて
この事を考えてみてください。
*
旅行の計画を立てる時
最初に、行き先を決めませんか?
行き先(ゴール)が
ハッキリしなければ
そこには到達できません。
自分の意図や意思を明確にする事が
思ったところにたどり着く
近道です。
【音楽も人生も同じこと】
この考え方は
アメリカという外国で生きる
私を支えてくれたことは
間違いありません。
そして日本では
普通の生徒だった私が
海外の数々のオーケストラで
プリンシパルのポジションを
頂けるようになったのは
この頃からです。